スペアナ測定に関する考察

2008.12.23作成
目的
 スペアナを入手して3年以上経過しました。無線にとって目的外周波数で生ずるスプリアスは大敵で、インターフェアの原因にもなります。
 私にとって調整には不可欠な測定器ですが、測定値の絶対値はどこまで正確なのか?を疑問に感じていました。
 主に測定評価しているのが50MHzから1GHzの範囲ですが、スペアナ本体はもちろん、送信出力の一部を検出する方向性結合器、さらに同軸ケーブルの影響も無視できないと思います。
 方向性結合器は3台所持していますが、測定値が変化します。若干の誤差は止むを得ないとしても、気がかりです。問題を切り分けて検討してみました。
最初にスペアナを評価
 まずはスペアナを確認します。手持ちの信号発生器(HP8656B、以下SGとする)とスペアナ(アドバンテストR4131)を直接接続し、信号出力とスペアナの測定表示値を比較しました。スイープジェネレータを持っていないので、アマチュアらしく力勝負?でSGの周波数を変えながらデータをメモしました。
 接続は、両装置の入出力コネクタに合わせてN型コネクタを接続した約80cmの5D-2Vケーブルです。
 ここで生ずる誤差要因は、1) SGの信号出力精度 2 )スペアナの測定精度 3) 同軸ケーブルの影響 が考えられます。まずは、データを取ってみました。 
ケーブルで接続し測定
 まずはスペアナを確認します。手持ちの信号発生器(HP8656B、以下SGとする)とスペアナ(アドバンテストR4131)を直接接続し、信号出力とスペアナの測定表示値を比較しました。スイープジェネレータを持っていないので、アマチュアらしく力勝負?でSGの周波数を変えながらデータをメモしました。
 接続は、両装置の入出力コネクタに合わせてN型コネクタを接続した約80cmの5D-2Vケーブルです。
 ここで生ずる誤差要因は、1) SGの信号出力精度 2 )スペアナの測定精度 3) 同軸ケーブルの影響 が考えられます。まず、データを取ってみました。
 SG出力-10dbmに設定、F=10-990MHzを10MHzステップで測定
 スペアナのマーカー機能を活用、最小分解能0.2dbm
SGとスペアナの周波数特性
 周波数による変動は少なく、1.5dB以下でした。同軸ケーブル・コネクタの損失も考慮し、SGの出力もスペアナの精度も十分あると判断しました。
 なお、高い周波数の変動を見やすくするため、X軸は対数ではなくリニアスケールで表示しました。
次は同軸ケーブルとコネクタ
 UHFレベルの高周波では、コネクタはN型が一般的です。他のケーブルとの違いを調べてみました。
 SGとスペアナへの接続は、変換コネクタを用いました。この影響も加味して判断します。
 ケーブルは以下の通りです。
コネクタ別に評価N型コネクタ
  約80cm(コネクタ長込み)
  :上記と同じもの(比較のため)
BNC型コネクタ
  約90cm(コネクタ長込み)
  + BNC-N変換コネクタ2個
M型コネクタ
  約70cm(コネクタ長込み)
  + M-N変換コネクタ2個
同軸は全て5D-2V
 SG出力-10dbmに設定、F=10-990MHzを10MHzステップで測定
  スペアナのマーカー機能を活用、最小分解能0.2dbm 
コネクタの影響
 NとBNCでは、ほとんど変化がありませんが、M型は700MHz以上で測定値が変動してきます。コネクタ(変換コネクタを含む)のインピーダンスの乱れが影響しているのでしょう。値が最大3dB程度波打っており、測定結果に影響してきます。
 430MHzの2倍高調波の860MHzでは無視できない誤差になります。
 実は、今まではリグと測定器・ダミーロードの接続はM型コネクタのケーブルを使用していました。ここは改めねばいけないな、と感じた次第です。
方向性結合器の損失は
 方向性結合器の損失を調べてみました。最初に入手したフジソク製の古いもので、同じ型が2台あります。今回は1台のみデータを取りました。周波数はDCから1000MHzまで、結合量-40dBですが、周波数特性は不明です。
方向性結合器
 結合出力に50オームのダミー抵抗(1-1000MHz)を接続し、挿入損失を調べました。これまた全く問題なく、ケーブルの損失を計算上引くと最大0.6dBしかありませんでした。これも安心しましたが・・・・・
通過損失の評価SG出力-10dbmに設定、F=10-990MHzを10MHzステップで測定
  スペアナのマーカー機能を活用、最小分解能0.2dbm
  方向性結合器の有無の差を計算しグラフ化
通過損失の結果
結合量を見てびっくり!
 出力を50オームで終端し、結合出力をスペアナに接続してみたのですが、周波数によって約6dBの変動がありました。無視出来ない誤差が生じてしまいます。
 また周波数によって結合度が変化し、一定ではありません。周波数特性は数dBの変動内で一定と思っていました。「そんな高級品ならジャンクでも安くはない」・・・・・そうですねHi。
 一流メーカーの製品でも周波数依存性はあります(アンリツのMP520シリーズを調べてみてください)。6dBの変動が小さくなれば、周波数特性を加味して測定データを補正すれば使えそうです。
 私にとっては、送信出力に対する不要スプリアスの相対レベル値が必要であり、絶対値は求めていません。
結合損失の評価SG出力+10dbmに設定、F=10-990MHzを10MHzステップで測定
スペアナのマーカー機能を活用、最小分解能0.2dbm
測定後、入力0dBmに計算で補正しグラフ化
BNC+ATTは、次項で説明
結合出力の結果
BNC+ATT6dBの曲線に沿った黒色の曲線は近似曲線(excelを使用)
アッテネータを追加し補正
 6dB変動の原因は、結合出力のインピーダンスミスマッチで定在波が発生するためです。出力にインピーダンスメータBR-400を接続し、入出力に50オームダミーを接続して結合出力のリターンロスを測定すると変化し、ピークの周波数が今回の測定結果と近似しました。
 対策として結合出力に手持ちのアッテネータ6dBを接続したところ、信号の反射が抑えられ、±1dBの変動に収まりました。(上図参照)近似曲線もまずまず引けます。
 -10dBのアッテネータならもっと良好なデータが期待できますが、一応使えそうなメドを得ました。
 今後は、上記近似曲線を参考にデータを補正することにします。たとえば144MHzの送信出力で3倍の432MHz成分が相対値で-60dBの場合、上記曲線カーブから430MHzは144MHzに比べ5dB結合量が大きいので、-65dBに相当すると考えます。
 今までのデータも、逐次見直します。